港とStation

  • 2017.11.14 Tuesday
  • 22:12

 

 舞台は雪の降りしきる銭函駅。走り出した汽車のデッキで、今にも泣き崩れそうになるのを必死に堪え、笑顔を作って敬礼している直子。ホームには別れることになった夫、英次が立っていた。1981年(昭和56年)に公開された映画「駅−Station」のワンシーン。いしだあゆみさんと健さんである。

 1980年(昭和55年)に放送されたNHKの大河ドラマ「獅子の時代」では、小樽港から樺戸監獄へ送られる囚人の列の中に無実の罪で捕われた元会津藩士の銑次(せんじ)がいた。演じていたのは若き日の文太さんである。

 

 義理と人情を秤にかけて、男らしさを貫いた昭和の大スターふたり。
 

 「駅−Station」は雄冬や増毛が主な舞台で、小樽のシーンはここだけだったけれど、それはそれは切ない別れのシーンで、走り去る汽車を見送りうつむきかげんに手袋をはく、健さんの姿が目の奥に残っている。


 JR札樽間の海岸線を走る電車が好きだ。いや、正しくは国鉄時代、札幌行きの汽車の窓から見えた海。進行方向をわざと背にして座り、ガタンゴトンと遠ざかる風景を見送る。あの景色が好きだった。

 

 大河ドラマとしてはめずらしく、架空の人物が主人公だったという「獅子の時代」は、薩摩の郷士と会津の下級武士が幕末から明治維新を生き抜く様が描かれており、実在の人物として小樽ゆかりの榎本武揚も登場する。そして北海道開拓時代の話も。


 吉村昭の小説「赤い人」を読んだことがある。それまで商都小樽繁栄の象徴だと思っていた港に、入ってくる船もいろいろだったのだと知り衝撃を受けた。大河ドラマに出てくる文太さんが演じたような囚人たちが、行き先も知らされないまま乗せられたという船だ。

 

 樺戸から道を開いて網走へ、その名も番外地へと続く。肩で風切る勢いの昭和。男として、人としてどう生きるか。演じ続けて時は流れ、平成も四半世紀。今生での役を全うし、次はあの世からの出番があるのかもしれない。そう思いたい。

 

 11月、ひとつの時代の終わりを告げるように天に召された健さんと文太さん。ふたりが小樽に残してくれた足跡は、その映像とともに深く心に残っている。

 

2014/12/22記

写真:まがら りか

 

 

※ このエッセイは、国立大学法人小樽商科大学の社会貢献・地域連携事業の一つ「ソーシャルメディアを使った観光振興」に関する実証的研究事業として、2013年4月に発足した「おたるくら しプロジェクト」のコミュニティサイト「おたるくらし」に掲載された文章です。

 

おたるくらし

http://otaru-class.com/blog/2015/03/13/%E6%B8%AF%E3%81%A8station/

 

 

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